未修・理系社会人がゼロから始める司法試験予備試験受験

貧乏勤務医が人生とキャリアにプラスを求め、ゼロから予備試験→司法試験を受験する過程を赤裸々に。2020/4月、中央大学法学部通信教育課程3年次編入。

【判例】三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)

今日の復習は三菱樹脂事件(最大判昭48.12.12)です。 私人間における人権保障の有名な判例なので、簡単な判旨は覚えている方も多いと思います。

判例のあらまし

まずは、判例のあらましから復習します。

事例

原告Xは、三菱樹脂株式会社の実施した社員採用試験に合格し、大学卒業後、同社に管理職候補として入社した。この雇用契約には3カ月間の使用期間が設けられていた。社員採用試験では、Xは身上書に「学生運動を行ったことはない」と記載し、面接時にも「学生運動には興味がなかった」と回答した。しかし、Xが大学在学中に学生運動に参加していたことが発覚し、虚偽の申告を行ったとして本採用を拒否された。これに納得がいかないXは、雇用契約上の地位確認請求を行った。

判事事項

一、憲法一四条、一九条と私人相互間の関係 二、特定の思想、信条を有することを理由とする雇入れの拒否は許されるか 三、雇入れと労働基準法三条 四、企業者が労働者の雇入れにあたりその思想、信条を調査することの可否 五、試用期間中に企業者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約に基づく留保解約権の行使が許される場合

裁判要旨

一、憲法一四条や一九条の規定は、直接私人相互間の関係に適用されるものではない。 二、企業者が特定の思想、信条を有する労働者をそのゆえをもつて雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。 三、労働基準法三条は、労働者の雇入れそのものを制約する規定ではない。 四、労働者を雇い入れようとする企業者が、その採否決定にあたり、労働者の思想、信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることは、違法とはいえない。 五、企業者が、大学卒業者を管理職要員として新規採用するにあたり、採否決定の当初においてはその者の管理職要員としての適格性の判定資料を十分に蒐集することができないところから、後日における調査や観察に基づく最終的決定を留保する趣旨で試用期間を設け、企業者において右期間中に当該労働者が管理職要員として不適格であると認めたときは解約できる旨の特約上の解約権を留保したときは、その行使は、右解約権留保の趣旨、目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許されるものと解すべきである。

以上、裁判所ホームページから引用 詳細は、以下をご参照ください。 www.courts.go.jp

判例のポイント

今日の復習ポイント

令和3年の予備試験短答の公法系第1問で私が間違えてしまった部分

〜〜〜 企業者が労働者の採否決定にあたり、

思想・信条自体の申告を求めることも」公序良俗に反しない。」→❌

これに関連する事項についての申告を求めることも」→⭕️ 〜〜〜 思想・信条について調査することと、これらについて関連することを聞くことはいいけど、直接思想・信条を聞いてはいけないのですね。

なお、厚生労働省が管轄する労働条件のサイトには、

(3) 企業者が、労働者の採否を決定するにあたり、労働者の思想、信条を調査するあるいはその者に申告させることも、法律上禁止された違法行為といえない。

と要約されていますので、厚生労働省は思想・信条を直接申告させても良いという見解なのでしょうか…

www.check-roudou.mhlw.go.jp