未修・理系社会人がゼロから始める司法試験予備試験受験+α

貧乏勤務医が人生とキャリアにプラスを求め、ゼロから予備試験→司法試験に挑む過程を赤裸々に。その他の資格の話も少々。

【未修社会人】未修理系社会人が予備校なし・完全独学で司法試験・予備試験の合格を目指すのは無謀なのか?

ネットやSNSでは「社会人が司法試験に挑戦するなんて無謀だ!」という意見をよく見かけます。

これは本当なのでしょうか?

今日は、全くの法学未経験者がゼロから司法試験受験を考えるにあたり、独学で司法試験および司法試験予備試験に合格することが可能なのかについて、これまでの経験や先人の皆様の教え、そして数々の予備校の無料講座やYouTube、X(旧Twitter)を見まくった結果を踏まえて考察してみます。

社会人受験生の合格率のリアル

予備試験受験者・合格者の属性

出典:法務省 令和5年司法試験予備試験口述試験(最終)結果 参考情報 https://www.moj.go.jp/content/001411552.pdf

まず最初に、どのくらいの社会人が予備試験に挑戦し、そして合格しているについておさらいしておきます。

法務省が公表している統計によると、令和5年(2023年)に予備試験に出願した人は、全部で16,704人いました。この統計全体については各予備校や個人ブログで解析・言及されている通り、受験率は80.05%、短答合格率16.07%、論文合格率2.92%、最終合格率2.87%(受験者からみると3.58%)となっていました。

全体では、出願者のうち100人に3〜4人前後が合格する計算となります。

出願者のおおまかな属性別合格率

ここで出願者を法科大学院生、大学生、無職を法学部等(法律を学んだことがある可能性が高い人たち)、それ以外の公務員・会社員などを社会人等に分けて解析してみました。

出願した社会人等8,114人のうち、実際に予備試験を受験したのは6,219人(76.6%)、最終合格までたどり着いたのはわずか103人。出願者から見た最終合格率は1.27%でした。

職歴・学歴からは理系・文系の区別がわかりませんが、予備合格を目指す社会人の大半が法学部卒な訳なので、それでも最終合格にたどり着くのは100人に1人余りという非常に狭き門となっていることがわかります。

社会人予備試験受験者の特徴

予備試験受験者・合格者のおおまかな属性

出典:法務省 令和5年司法試験予備試験口述試験(最終)結果 参考情報 https://www.moj.go.jp/content/001411552.pdf

出願者を法科大学院生、大学生、無職を法学部等(法律を学んだことがある可能性が高い人たち)、それ以外の公務員・会社員などを社会人等に分けて細かくデータを見ていくと、以下のような特徴がわかりました。

(ちなみに無職を法学部等に入れたのは、司法浪人の割合が高そうだからという解釈です。公務員・会社員などについても法学部卒の割合が高そうですが、そこまで調べたデータが見つからなかったので、「可処分時間が少ない」という観点で社会人にそのまま入れて解析しました。その他については、「無職」というカテゴリーがある以上、そこに入っていないということは間違いなく何らかの職業についているとみなし、これも社会人にいれています。)

  • そもそも出願者数に対する受験者の割合が法学部等に比べ低い(法学部等83.27%、社会人等76.65%)
  • 出願者に対する短答合格率は法学部等の方が高い(法学部等16.30%、社会人等15.84%)が、受験者に対する短答合格率はむしろ社会人の方が高い(法学部等19.57%、社会人等20.66%)
  • 論文合格率は、圧倒的に法学部等の方が高い(全受験者に対する割合:(法学部等4.44%、社会人等1.31%)、短答合格者に対する割合:(法学部等27.21%、社会人等8.25%))
  • 口述試験の合格率はほぼ差がない(法学部等83.27%、社会人等76.65%)

これらについて一つ一つ見ていきます。

そもそも出願者数に対する受験者の割合が法学部等に比べ低い

出願者に対する短答合格率は法学部等の方が高いが、受験者に対する短答合格率はむしろ社会人の方が高い

論文合格率は、圧倒的に法学部等の方が高い

口述試験の合格率はほぼ差がない

あちこちで言われ続けていることですが、予備試験の場合、短答→論文試験を突破しさえすれば、口述試験の合格率には差がないということがわかります。

大学生との比較でよく言われていることですが、今回切り口を法学部等vs社会人等に変えても同じ結果が出ました。母数が少なすぎるので、統計学的な処理は困難ですが…

まあ、口述試験の合格率が極めて高いので当たり前の結果なのかもしれません。

社会人にとっては業務でのプレゼン経験が活きる場面でもあり、確実に合格を狙いたいところです。

確率論からは「そもそも合格すること自体がなかなか難しい」かもしれないが…

したがって、確率論的には「法律純粋未修の社会人はそもそも予備試験に合格することが難しい」となるのですが、不可能ではありません。

ここで、各予備校が宣伝がわりに出している合格者のうち、理系と思われる方の経験談をリンクでご紹介しておきます。

司法試験は現役法学部生だけのものじゃない! 理系出身・元声優だった私の合格講演会

公務員・医師のキャリア、私だけが描ける未来を目指して

社会人合格者の声

この方達は当然、がっつり課金して予備校を利用しているわけなので、「予備校なし・完全独学」というコンセプトに合うかどうかは何とも言えないところがあります。

社会人が予備試験に完全独学で合格するためのポイント

未修理系社会人にとって、予備試験合格が決して夢物語ではないと言うことがわかっていただけたかと思います。

ここでは合格の秘訣や予備校講師の意見からまとめた「社会人が予備試験に受かるためのポイント」をいくつかご紹介いたします。

なお、ここでの「完全独学」とは、予備校に課金しないという意味で用いています。独学だからこそ、効率よく知識を得られる予備校の無料講義は使い倒すべき!というのが私の持論です。

合格に必要とされる技能を理解する

https://bexa.jp/upload/colitems/559.png?1706522275

私もそうでしたが、未修理系社会人の場合、法律の勉強経験がないため「何をどのくらい勉強し、どのくらいまでできたら合格するのか?」についての理解が足りません。

ここをはっきりと述べているのが、引用させていただいた上の図の作成者でもある、BEXAの伊藤たける先生です。

勉強法についてお話しされている以下の動画は必見です。


www.youtube.com

独学でできる部分とできない部分をはっきりさせることが重要

先に結論から言うと、2024年現在では、未修理系社会人が(無料講座も含めて)全く予備校の手を借りずに予備試験に合格することは極めて困難です。

またYouTubeなど動画配信のプラットフォームが整った現代において、予備校や個人が配信する講義の動画を一切利用しないと言うことは、コスパ・タイパの面から考えても割に合わないと思います。

上記の伊藤たける先生は、Xで以下のように「独学で良い部分」「独学では難しい部分」を分けています。予備校経営者なのでポジショントークも含まれているのは間違い無いですが、私の実感としても、概ね妥当なところです。

独学でできる部分

実は最も難しそうな基礎知識を学ぶ講座は、独学というか無料動画で勉強できます。

私はBEXAの中村充先生が公開されている「4S基礎講座」のうち、無料公開となっている条解講座を利用しまくっています。この講座は「項目ごと」ではなく「条文ごと」に解説がついているので、最近の司法試験・予備試験のトレンドにも合っていると思いますし、理系社会人に欠落している基本を試験で使える形で押さえることができます。

また「まずは各科目・項目ごとの概略をざっくり押さえたい」という方には、アガルートの総合講義300のサンプル動画 や、辰巳法律研究所の基礎集中講義サンプル授業

資格スクエアは、登録すると56回分の無料講義体験が視聴できる仕組みとなっています。

また九州大学法学部教授の南野 森先生(憲法学)は、ご自身のXにて【法学者講義動画リスト】を公開されています。

独学ではほぼ困難な部分

反対に、どうしても独学では身につけることが難しいところもあります。

各種予備校や合格者の意見を総合すると、絶対に予備校の手を借りた方が良い部分は「論文の書き方」、そしてある程度答案が書けるようになった段階で「書いた論文の添削」です。

自分の目で見たら書けるように見えていても、講師や合格者の目から見ると穴だらけ、ということはよく起こります。

添削はそれなりに高額なので、自分で答案添削をやってみたい方はBEXAの愛川先生の講座「答案自己添削の技法をお勧めしておきます。

YouTubeなどを利用する際には出典にご注意を

社会人の皆さまは問題なく確認されていると思いますが、念のため、注意喚起を一言行っておきます。

Youtubeで「司法試験」とか「予備試験」とかでワード検索をかけると、それはもう大量の動画が出てきます。出てくるのですが、勉強する際には「どこの誰がアップしている動画なのか」を確認することをお勧めします。

各予備校、そして予備校に属する講師がアップしている動画は、各予備校の威信にかけて、最低限の信頼性が担保されている(はず)のに対し、個人でアップしている方の動画については、内容の信頼性は誰も担保してくれません。

個人が運営する当ブログについても同じことが言えるのですが、ネットや動画の内容については、配信者のバックグラウンドをよくご確認の上で、信頼できる人の記事や動画を上手に利用して勉強を進めていただくと良いと思います。

完全独学派におすすめの本(初級編)

ここまで話を進めてきましたが、やはりどうしても予備校の利用には抵抗がある、ネット環境の関係で無料動画を観るのも難しい、という方向けに、初めの一歩にオススメの本をいくつかご紹介しておきます。

まずは「予備試験」というものを知るための本

学習に入る前に、「予備試験」というものがさっぱりなんだかわからないという方も多いと思いますので、「司法試験・予備試験 社会人合格者のリアル(中央経済社)」をお勧めしておきます。

まさにタイトルの通り、30代から40代の社会人受験生5人の経験談をまとめた本です。

一般的な勉強法について知る

一般的な司法試験・予備試験の勉強について大まかに知りたい、という場合は「伊藤真が教える司法試験予備試験の合格法(日経BPマーケティング)」がお勧めです。

伊藤真先生はあの伊藤塾の塾長でもあり、司法試験受験業界に携わって40年以上という経歴をお持ちです。他にも色々と勉強法について書いた本が出ていますが、やはり他の誰よりも司法試験・予備試験について熟知している伊藤真先生の本をお勧めします。

中古でしか手に入らない場合もあるようです。

試験問題や傾向について知る

マークシート式の短答式試験についてはなんとなくわかるけど、論文式試験ってどんな感じだろう?という方にオススメなのが、「[司法試験・予備試験 出題趣旨・採点実感アナリティクス: 論文対策の道しるべ(中央経済グループパブリッシング](https://amzn.to/4b0XHUJ))」です。

法律の勉強をしたことがない方にはちょっと難しい内容かもしれませんが、あらかじめゴールを知ってから勉強する方が効率が良いです。

論文式試験を採点した感想については、法務省が「採点実感」という形で毎年公開しているのですが、正直なところ長くて読みにくい文章です。ゴールについて端的に述べてある、一般的に書店で販売されている本の中ではこの本が秀逸だと思います。

まとめ

法律未経験の理系社会人にとって、予備試験合格は容易ではありません。結論から言うと、全く予備校の力を借りずに完全独学で予備試験に合格するのはなかなか難しいです。

ですが、現在はYouTubeなどの動画プラットフォームや各種予備校、特にBEXAなど完全オンラインの講座を持つ予備校のおかげで、最小限の出費で最大限の効果を発揮できる環境が整っています。

したがって、勉強を継続する強い意志と努力があれば、合格することは可能です。

お互いに諦めずに学習を続け、夢を実現させましょう!