未修・理系社会人がゼロから始める司法試験予備試験受験

貧乏勤務医が人生とキャリアにプラスを求め、ゼロから予備試験→司法試験を受験する過程を赤裸々に。2020/4月、中央大学法学部通信教育課程3年次編入。

【未習社会人向け】予備試験と行政書士試験を徹底比較!予備試験受験者はコスパ的に行政書士試験を先に受けるべきか?

予備試験を受ける前に行政書士試験を受けた方が良いのか?

私のように法学部出身ではない方の場合、まずは行政書士試験から始めようとお考えの方も多いと思います。

行政書士試験に合格し、予備試験短答式試験を受験した今だから言える、

  • 予備試験と行政書士試験の共通点と相違点
  • 結局、法律初心者は行政書士試験を受けてから予備試験を受けた方が良いのか
  • 予備試験の前に行政書士試験を受けたほうが良い人はどんな人か

について、実体験を元に考察します。

予備試験と行政書士試験の共通点

改めて考えると、予備試験と行政書士試験には意外と多くの共通点があります。

共通の科目がある

予備試験・行政書士試験・司法書士試験の試験科目比較
予備試験・行政書士試験・司法書士試験の試験科目比較

共通点の一つは、試験科目です。社会人に人気の司法書士試験も合わせ、それぞれの試験科目の比較表を作成してみました。

行政書士試験の科目は、憲法、民法、商法・会社法、行政法、一般教養です。

このうち、憲法、民法、商法・会社法、行政法については予備試験と共通の科目であり、予備試験の短答については、行政書士試験で得た知識をある程度そのまま用いることができます。

注)ただし、一般教養については、予備試験と行政書士試験に共通した科目であるものの、内容はほとんど被らないのでお気をつけください。行政書士試験での貯金はほとんど使えないと思って良いでしょう。

予備試験短答も行政書士試験も(一部を除いて)マークシート式である

予備試験の短答式試験も、行政書士試験(記述式3問を除く)も、マークシート式であり、正しい答えを短い時間で導くことが必要です。

予備試験と行政書士試験の相違点

次は、予備試験と行政書士試験の相違点についてみてみます。

試験科目が違う

司法試験予備試験には、刑法、民訴法、刑訴法、などの法律分野を幅広く網羅しています。

一方、行政書士試験は、行政法の中に地方自治法など行政法分野を中心に試験範囲が絞られています。

同じ試験科目の中でも、重点的に問われる分野がやや異なっていますので、行政書士試験に上位で合格できたからといって、予備試験の短答式試験にすんなり合格できるわけではありません。

行政書士試験にも記述式試験があるが、内容は予備試験の論文式試験とは全く異なる

行政書士試験には一応記述式試験がありますが、予備試験の論文式試験とはそもそも問われている内容が違います。

行政書士試験の記述式試験は民法2問、行政法1問です。配点はそれぞれ20点、合計60点と非常に大きいものがあります(満点は300点、合格点は180点以上)。

内容は、提示された問題に対する回答を40字程度で書く、というものです。問題は、事例や判例に即したものが多く、それなりの長文となっています。求められる回答は、問題に対する請求権や法律的解決策などです。

行政書士試験は知識の有無を問うが、予備試験は知識をどのように使うかを問う

予備試験の論文式試験は、問題文に対して長文回答が求められる論述式の問題が主体です。短答式試験や行政書士試験と異なり、知識があることを前提として、問題文で示す具体的な事例を正しく読み解き、知識を用いて筋の通った法的な回答を導くことを目的としています。

つまり、知識の量を問う試験ではなく、知識を法的に正しく運用できるかを問う試験なのです。

短答式試験には余裕で毎年合格するのに、論文式試験を通過することができないという方が一定数いますが、それは、この「具体的な事例を正しく読み解き」「筋の通った法的な回答を導く」能力のいずれか、もしくは両方が欠落しているためと思われます。

資格取得後の違い

当然ですが、この2つの試験を合格することで、得られる資格が異なります。 司法試験予備試験に合格することで、司法修習を経て、裁判官、検察官、弁護士、企業法務などの職業に就くことができます。

一方、行政書士試験に合格することで、行政書士として、一般市民や企業などの法的手続きの代理や支援を行うことができます。

予備試験受験を前提として、行政書士試験を受けた方が良い人、受ける必要がない人

以上を考慮し、予備試験受験の前に行政書士試験を受けた方が良い人と、受ける必要がない人はどんな人かについて考察してみました。

行政書士試験を先に受けた方が良い人

行政書士試験を先に受けた方が良い人のパターンをいくつか示します。

  • 法律に興味があるが、まだどの分野に進むか決めていない人
  • 司法試験予備試験の合格が遠いと感じる人
  • 実務的な法律知識を身につけたい人
  • 時間の余裕が比較的ある人
  • 何らかの結果が欲しい人

法律に興味があるが、まだどの分野に進むか決めていない人

司法試験予備試験は、法律分野を広く網羅しているため、どの分野に進むか決めかねている方は、行政書士試験から始めることで、法律の基礎知識を学ぶことができます。

司法試験予備試験の合格が遠いと感じる人

司法試験予備試験は、合格率が低く、試験範囲も広いため、受験生にとって大きな壁となっています。そんな中、行政書士試験は、比較的合格率が高く、試験範囲も狭いため、合格への近道となる可能性があります。

実務的な法律知識を身につけたい人

行政書士は、一般市民や企業などの法的手続きの代理や支援を行う職業です。そのため、実務的な法律知識を身につけたいと思っている方は、行政書士試験を先に受けることで、実務に必要な知識を学ぶことができます。

時間の余裕が比較的ある人

たとえ似ている部分が多いとしても、司法試験予備試験と行政書士試験は異なる資格を得るための試験です。最終目標を予備試験合格とすると、行政書士試験を受けることは、やや遠回りになる可能性があります。したがって、予備試験の短期合格を狙っている人、またたとえば○年間と期限を区切って予備試験の勉強をする人には不向きの方法と言えます。

何らかの結果が欲しい人

司法試験予備試験の合格率は非常に低く、実際に非法学部卒の社会人が試験に合格する確率は数%です。シビアな言い方をすると、数年間の時間とお金をかけて勉強しても、明らかな結果が残らない可能性の方が高いです。勉強に費やしたこれらのコストを何らかの形で回収したい、目に見える形で残したい場合、行政書士試験の受験は良い選択肢だと思います。

行政書士試験に合格し都道府県の行政書士会に登録すると、行政書士として開業し、実務を行うことが可能です。現時点では、登録までの期限は定められておらず、たとえば10年後などに登録・開業することも制度としては問題ありません。

以上のように、行政書士試験を先に受けることで、法律分野に進む方向性を見出したり、合格への近道を探したり、実務的な法律知識を身につけることができます。

行政書士試験を受ける必要がない人、受けない方が良い人

行政書士試験を受けずにすぐ司法試験予備試験を受けた方が良い人は、以下のような方々です。

長期的に司法試験に取り組みたい人

司法試験は、合格率が低く、試験範囲も広いため、長期的な準備が必要です。そのため、行政書士試験などの他の資格を取得する時間を取るのではなく、すぐに司法試験に取り組むことを選択する方が良いでしょう。

高度な法律知識を学びたい人

司法試験は法学部の学位を持たない人でも受験可能であり、法律分野の専門知識を習得することができます。そのため、法学部の学位を持っていないが、高度な法律知識を身につけたいと思っている方には、司法試験が適していると言えます。

制度変更などで司法試験が難しくなる前に受験したい人

司法試験は、政府や司法制度の変化によって難易度が変わる可能性があります。そのため、将来的に司法試験が難しくなる前に受験することを考えている方は、行政書士試験を受けずにすぐに司法試験に取り組むことが適しているでしょう。

以上のように、長期的に司法試験に取り組む意志があり、高度な法律知識を身につけたい方や、制度変更などで将来的に司法試験が難しくなる前に受験したい方は、行政書士試験を受けずにすぐに司法試験に取り組むことが適しています。ただし、司法試験は難易度が高いため、十分な準備期間を設け、合格に向けた努力が必要です。

結論

司法試験予備試験と行政書士試験について、その類似点と相違点を簡単にまとめました。予備試験と行政書士試験の関係は、法律の基礎と応用の関係に少し似ています。自分が法律の勉強に向いているかどうかを知るには、行政書士試験の勉強をしてみるのも良いと思います。