未修・理系社会人がゼロから始める司法試験予備試験受験+α

貧乏勤務医が人生とキャリアにプラスを求め、ゼロから予備試験→司法試験に挑む過程を赤裸々に。その他の資格の話も少々。

【未習社会人向け】予備試験と司法試験、そして行政書士・司法書士試験を徹底比較!予備試験受験者はコスパ的に行政書士試験を先に受けるべきか?

予備試験を受ける前に行政書士試験を受けた方が良いのか?

私のように法学部出身ではない方の場合、まずは行政書士試験から始めようとお考えの方も多いと思います。

行政書士試験に合格し、予備試験短答式試験を受験した今だから言える、

  • 予備試験と行政書士試験の共通点と相違点
  • 予備試験と司法試験の比較
  • 結局、法律初心者は行政書士試験を受けてから予備試験を受けた方が良いのか
  • 予備試験の前に行政書士試験を受けたほうが良い人はどんな人か

について、実体験を元に考察します。また、リクエストが多かったので、司法書士試験と予備試験・司法試験についても文献的に考察を行いました。

予備試験と行政書士試験の共通点

改めて考えると、予備試験と行政書士試験には意外と多くの共通点があります。

共通の科目がある

予備試験・行政書士試験・司法書士試験の試験科目比較
予備試験・行政書士試験・司法書士試験の試験科目比較

共通点の一つは、試験科目です。社会人に人気の司法書士試験も合わせ、それぞれの試験科目の比較表を作成してみました。

行政書士試験の科目は、憲法、民法、商法・会社法、行政法、一般教養です。

このうち、憲法、民法、商法・会社法、行政法については予備試験と共通の科目であり、予備試験の短答については、行政書士試験で得た知識をある程度そのまま用いることができます。

注)ただし、一般教養については、予備試験と行政書士試験に共通した科目であるものの、内容はほとんど被らないのでお気をつけください。行政書士試験での貯金はほとんど使えないと思って良いでしょう。

予備試験短答も行政書士試験も(一部を除いて)マークシート式である

予備試験の短答式試験も、行政書士試験(記述式3問を除く)も、マークシート式であり、正しい答えを短い時間で導くことが必要です。

予備試験と行政書士試験の相違点

次は、予備試験と行政書士試験の相違点についてみてみます。

試験科目が違う

司法試験予備試験には、刑法、民訴法、刑訴法、などの法律分野を幅広く網羅しています。

一方、行政書士試験は、行政法の中に地方自治法など行政法分野を中心に試験範囲が絞られています。

同じ試験科目の中でも、重点的に問われる分野がやや異なっていますので、行政書士試験に上位で合格できたからといって、予備試験の短答式試験にすんなり合格できるわけではありません。

行政書士試験にも記述式試験があるが、内容は予備試験の論文式試験とは全く異なる

行政書士試験には一応記述式試験がありますが、予備試験の論文式試験とはそもそも問われている内容が違います。

行政書士試験の記述式試験は民法2問、行政法1問です。配点はそれぞれ20点、合計60点と非常に大きいものがあります(満点は300点、合格点は180点以上)。

内容は、提示された問題に対する回答を40字程度で書く、というものです。問題は、事例や判例に即したものが多く、それなりの長文となっています。求められる回答は、問題に対する請求権や法律的解決策などです。

行政書士試験は知識の有無を問うが、予備試験は知識をどのように使うかを問う

予備試験の論文式試験は、問題文に対して長文回答が求められる論述式の問題が主体です。短答式試験や行政書士試験と異なり、知識があることを前提として、問題文で示す具体的な事例を正しく読み解き、知識を用いて筋の通った法的な回答を導くことを目的としています。

つまり、知識の量を問う試験ではなく、知識を法的に正しく運用できるかを問う試験なのです。

短答式試験には余裕で毎年合格するのに、論文式試験を通過することができないという方が一定数いますが、それは、この「具体的な事例を正しく読み解き」「筋の通った法的な回答を導く」能力のいずれか、もしくは両方が欠落しているためと思われます。

資格取得後の違い

当然ですが、この2つの試験を合格することで、得られる資格が異なります。 司法試験予備試験に合格することで、司法修習を経て、裁判官、検察官、弁護士、企業法務などの職業に就くことができます。

一方、行政書士試験に合格することで、行政書士として、一般市民や企業などの法的手続きの代理や支援を行うことができます。

予備試験と司法試験の比較

そして、そもそも最終目標である司法試験と予備試験について、それぞれを比較しながら簡単におさらいしておきます。

そもそも司法試験予備試験とは?

そもそも司法試験予備試験は、法科大学院を修了していない人が司法試験の受験資格を得るための試験です。

したがって予備試験は、「法科大学院課程を修了した者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務基礎的素養を有するかどうかを判定すること」を目的として行われます。

受験資格及び受験期間の制限はありません。

受験手数料は17,500円です。

短答式試験→論文式試験→口述試験の3つを同じ年にクリアする必要があります。

短答式試験

予備試験の短答式試験は、マークシート式です。

試験科目は、憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養の8科目です。

試験時間 試験科目 配点
9:45~11:15(90分) 民法・商法・民事訴訟法 90点
12:00~13:00(60分) 憲法・行政法 60点
14:15~15:15(60分) 刑法・刑事訴訟法 60点
16:00~17:30(90分) 一般教養 60点

合計270点満点で、合格点はおよそ160点以上です。 合格率は、例年20-25%前後を推移しています。

一般教養とは???

出題範囲は人文科学・社会科学・自然科学、英語と非常に幅広くなっています。 40問中20問を選択できます。

論文式試験

記述式試験です。 課題分を読み、A4用紙4枚以内(およそ1,500字程度)で回答します。

令和 年より、これまであった一般教養がなくなり、選択科目が追加されています。

試験時間 試験科目 配点
1日目
9:30~11:50(140分) 憲法・行政法 100点
13:15~15:35(140分) 刑法・刑事訴訟法 100点
16:30~17:30(60分) 選択科目 50点
2日目
9:30~12:30(180分) 法律実務基礎科目(民事・刑事) 50点
14:00~17:30(210分) 民法・商法・民事訴訟法 150点

各科目50点、合計500点満点です。 短答式試験の合格者のうち、毎年2割程度が論文式試験に合格します。

口述試験

試験時間は1人あたり15分~30分。

法律実務基礎科目の民事と刑事の分野で弁論能力を試されます。基本的には論文式試験の知識で間に合います。

基準点は60点です。57~63点で採点され、56点以下だと不合格となります。 合格率は90-95%と非常に高いです。

司法試験予備試験|実際の合格率

例年、トータルの合格率としては3%程度で推移しています。 社会人の合格率はおよそ1-2%、学生の合格率は7%前後です。

詳しく、そして正確な情報が欲しい方は、法務省のホームページ「司法試験予備試験の結果について」をご覧ください。

www.moj.go.jp

(参考)司法試験とは?

★受験資格 法科大学院課程の修了者、もしくは司法試験予備試験の合格者

★受験期間制限 法科大学院課程の修了の日又は司法試験予備試験の合格発表の日後の最初の4月1日から5年の期間内は毎回受験することができる。

また,司法試験を受験した者は,その受験の基礎となった受験資格に対応する受験期間内は,他の受験資格に基づいて司法試験を受けることはできない。

司法試験と予備試験の違い

  司法試験 予備試験
受験資格 法科大学院修了もしくは予備試験合格 なし
試験回数 1回(論文と短答を同一日程で行う) 3回(短答⇨論文⇨口述)
短答の試験範囲 3科目(憲法,民法,刑法) 8科目(憲法・行政法・民法・商法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・一般教養)

予備試験を受験を前提として、行政書士試験を受けることのメリット・デメリット

予備試験と行政書士試験の関係については、様々な意見がありますが、一般的には以下のようなメリットとデメリットが考えられます。

メリット:

  • 予備試験と行政書士試験は、試験科目や問題形式に共通点が多く、行政書士試験で得た知識やスキルが予備試験に役立つ可能性が高いです。
  • 行政書士試験は、比較的合格率が高く、試験範囲も狭いため、予備試験の合格に向けて自信やモチベーションを高めることができます。
  • 行政書士試験に合格することで、行政書士として実務的な法律知識を身につけたり、開業したりすることができます。

デメリット:

  • 予備試験と行政書士試験は、試験科目や内容に違いもあり、行政書士試験に合格したからといって、予備試験にすんなり合格できるわけではありません。
  • 行政書士試験を受けることは、予備試験の勉強に費やす時間や労力を削ることになり、予備試験合格を遅らせる可能性があります。
  • 行政書士試験に合格しても、予備試験の目標が変わらない場合、行政書士としての活動や資格のメリットを十分に享受できない可能性があります。

行政書士試験から予備試験を受験した方の体験記

予備試験受験を前提として、行政書士試験を受けた方が良い人、受ける必要がない人

以上のように、予備試験を受ける前に行政書士試験を受けるかどうかは、個人の目標や状況によって異なります。あなたの最終的な目標は何でしょうか?それに応じて、最適な受験計画を立てることが大切です。

ということで、予備試験受験の前に行政書士試験を受けた方が良い人と、受ける必要がない人はどんな人かについて考察してみました。

行政書士試験を先に受けた方が良い人

行政書士試験を先に受けた方が良い人のパターンをいくつか示します。

  • 法律に興味があるが、まだどの分野に進むか決めていない人
  • 司法試験予備試験の合格が遠いと感じる人
  • 実務的な法律知識を身につけたい人
  • 時間の余裕が比較的ある人
  • 何らかの結果が欲しい人

法律に興味があるが、まだどの分野に進むか決めていない人

司法試験予備試験は、法律分野を広く網羅しているため、どの分野に進むか決めかねている方は、行政書士試験から始めることで、法律の基礎知識を学ぶことができます。

司法試験予備試験の合格が遠いと感じる人

司法試験予備試験は、合格率が低く、試験範囲も広いため、受験生にとって大きな壁となっています。そんな中、行政書士試験は、比較的合格率が高く、試験範囲も狭いため、合格への近道となる可能性があります。

実務的な法律知識を身につけたい人

行政書士は、一般市民や企業などの法的手続きの代理や支援を行う職業です。そのため、実務的な法律知識を身につけたいと思っている方は、行政書士試験を先に受けることで、実務に必要な知識を学ぶことができます。

時間の余裕が比較的ある人

たとえ似ている部分が多いとしても、司法試験予備試験と行政書士試験は異なる資格を得るための試験です。最終目標を予備試験合格とすると、行政書士試験を受けることは、やや遠回りになる可能性があります。したがって、予備試験の短期合格を狙っている人、またたとえば○年間と期限を区切って予備試験の勉強をする人には不向きの方法と言えます。

何らかの結果が欲しい人

司法試験予備試験の合格率は非常に低く、実際に非法学部卒の社会人が試験に合格する確率は数%です。シビアな言い方をすると、数年間の時間とお金をかけて勉強しても、明らかな結果が残らない可能性の方が高いです。勉強に費やしたこれらのコストを何らかの形で回収したい、目に見える形で残したい場合、行政書士試験の受験は良い選択肢だと思います。

行政書士試験に合格し都道府県の行政書士会に登録すると、行政書士として開業し、実務を行うことが可能です。現時点では、登録までの期限は定められておらず、たとえば10年後などに登録・開業することも制度としては問題ありません。

以上のように、行政書士試験を先に受けることで、法律分野に進む方向性を見出したり、合格への近道を探したり、実務的な法律知識を身につけることができます。

伊藤塾では、法律既習者のための行政書士試験受験パックを設けているようですので、興味のある方向けにリンクを貼っておきます。

法律既習者のための行政書士試験講座〜伊藤塾

行政書士試験を受ける必要がない人、受けない方が良い人

行政書士試験を受けずにすぐ司法試験予備試験を受けた方が良い人は、以下のような方々です。

長期的に司法試験に取り組みたい人

司法試験は、合格率が低く、試験範囲も広いため、長期的な準備が必要です。そのため、行政書士試験などの他の資格を取得する時間を取るのではなく、すぐに司法試験に取り組むことを選択する方が良いでしょう。

高度な法律知識を学びたい人

司法試験は法学部の学位を持たない人でも受験可能であり、法律分野の専門知識を習得することができます。そのため、法学部の学位を持っていないが、高度な法律知識を身につけたいと思っている方には、司法試験が適していると言えます。

制度変更などで司法試験が難しくなる前に受験したい人

司法試験は、政府や司法制度の変化によって難易度が変わる可能性があります。そのため、将来的に司法試験が難しくなる前に受験することを考えている方は、行政書士試験を受けずにすぐに司法試験に取り組むことが適しているでしょう。

以上のように、長期的に司法試験に取り組む意志があり、高度な法律知識を身につけたい方や、制度変更などで将来的に司法試験が難しくなる前に受験したい方は、行政書士試験を受けずにすぐに司法試験に取り組むことが適しています。ただし、司法試験は難易度が高いため、十分な準備期間を設け、合格に向けた努力が必要です。

(考察)司法書士試験から予備試験→司法試験を受けようと考えている方へ

予備試験・行政書士試験・司法書士試験の試験科目の比較

このブログの読者の方には、行政書士試験ではなく司法書士試験から予備試験を目指す方、また行政書士試験から予備試験を目指しては見たものの、難易度の高さに断念し、司法書士試験に切り替える方が一定数おられます。

そのような方向けに、司法書士試験について若干の考察を加えておきます。

司法書士試験と予備試験は、科目の多くが被っています。

具体的には、上記に挙げた司法書士試験の試験項目のうち、

  • 択一式:実体法科目(憲法、民法、会社法・商法、刑法)
  • 択一式:訴訟法科目(民事訴訟法)

の計5科目が共通しています。

そうなると、予備試験の学習の途中から司法書士試験に切り替える、または司法書士試験の合格者が予備試験の勉強を開始する場合、新しく覚えることが少ないというのは大きなアドバンテージになるかと思います。

さらに配点を見ても、民法及び商法、民事訴訟法の配点がそれなりに高いのもポイントです。

反面、司法書士試験に独自の科目(民事保全法、民事執行法、司法書士法、供託法、不動産登記法、商業登記法)については他試験とは被らない科目となるので、それなりの学習量は必要となります。

特に不動産登記法・商業登記法については択一の配点が大きいのはもちろんのこと、記述式試験もあるため、入念な準備と対策が必要です。

司法書士試験に合格後、司法試験に挑戦した方の体験記が伊藤塾のHPにありましたので、参考までにリンクを貼っておきます。

司法書士合格後、司法試験へ挑戦。社会人受験生が短期合格するには「節勉」が必要。

結論

司法試験予備試験と行政書士試験について、その類似点と相違点を簡単にまとめました。予備試験と行政書士試験の関係は、法律の基礎と応用の関係に少し似ています。自分が法律の勉強に向いているかどうかを知るには、行政書士試験の勉強をしてみるのも良いと思います。

「どうしても自分では決められない」とお悩みの方は、予備試験と行政書士試験、両方の講座を出している予備校(伊藤塾 アガルートアカデミー 資格スクエア )が実施している無料相談などを使っていただくのも一案です。

この記事を読んでくださった方にとって、より良い選択肢を選ぶことができるよう全力で応援しています。 一緒に頑張りましょう!