『所有権絶対の法則』とは、「所有権は不可侵の権利であり、国家を含めあらゆる人為的拘束を受けない」という法則です。
つまり、所有者は自由に物を支配することができ、その物に対して他人が何らかの権利を主張することはできません。
この法則は、民法や不動産登記法など、日本の法律制度の中でも重要な位置を占めています。近代私法における3つの基本原理・原則のうちの1つです。
日本国憲法では第29条において基本的人権の一つとしての財産権を定めており、所有権は財産権の最も重要なものとして、公共の福祉に反しない範囲で保護を受けています。
今回は、そもそも『所有権』とはどんな権利なのかについてまとめておくとともに、『所有権絶対の法則』に関する具体的な事項について解説します。
『所有権』とはどんな権利なのか
『所有権』とは、「物の使用価値と交換価値の双方を支配することのできる権利」のことです。
—『民法(全)(第3版)』潮見佳男著
所有権の範囲
(所有権の内容) 第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
引用:
民法第206条に定められている通り、所有権者は、その物に対して使用・利用・処分の自由を有します。ただし、公序良俗に反する行為や他人の権利を侵害する行為は禁止されます。
所有権の取得
所有権は、物を占有することによって取得することができます。ただし、物の所有者が不明である場合や、物の取得について約束がある場合などには、占有だけでは所有権を取得できません。
所有権の侵害
所有権者に対して、他人が物の使用・利用・処分を妨害することはできません。民法に明文はありませんが、解釈上、所有権を侵害しようとする他者に対しては、所有権に基づきその侵害を排除できるとされています。所有権侵害があった場合、所有者は侵害者に対し、損害賠償請求権や排除権を行使することができます。
公共の利益による制限
所有権は、公共の利益に反する場合には制限されることがあります。たとえば、土地の一部が公共の用途に供される場合には、その土地の所有者は補償を受けることができますが、土地の売却や使用に関する制限が課せられることがあります。
まとめ
以上、『所有権絶対の法則』に関する基本的な事項をまとめました
所有権に関する法律は複雑であり、具体的な事案によって解釈が異なることがあります。
予備試験および司法試験にあたっては、問題文をしっかり読んで、問題の所在を的確に捉えることを心がけましょう。