物権とは
物を支配する権利のことを「物権」という。
ちなみに法律上の「物」とは有体物のことを指す。
第四章 物 (定義) 第八十五条 この法律において「物」とは、有体物をいう。
物権は絶対権であり,排他性を有する権利である。
第175条(物権の創設)物権典型の強制 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。
民法は,財産権の絶対を基本原理の1つに据えている。
その結果,所有権ほか物権を有する者は,物権に基づいてその物を支配していることを万人に対して主張することができるし,他人からの干渉を排してその支配を貫徹できる。
物権の意義と性質
1、直接支配性
物権は、物を直接に支配して利益を得ることをその内容とします。
他人になんらかの行為を請求する権利である債権とは本質的に異なります。債権は、他人(債務者)の行為を介してはじめて権利の内容が実現します。
2、絶対性
物権を有する者は、すべての人に対してその権利を主張することができます。 これを物権の絶対性と呼びます。
3、排他性
一つの物の上には、同じ内容の物権を重ねて成立させることはできません。 これを物権の排他性といいます。
債権との比較(任意規定と強行規定)
物権と債権を比較するためには、任意規定と強行規定という用語を覚えておく必要がある。
- 任意規定:当事者の合意による特約によって排除することができる規定
- 強行規定:当事者の合意によって変えることのできない公の秩序に関する規定
契約等などに基づいて発生する債権は、契約自由の原則により、公序良俗に反しない限り当事者の合意によって自由に決定できる。
よって債権の規定は任意規定が多いということになる。
対して、その内容を自由に創設・変更することのできないとする物権の規定の性格は強行規定である。
物権の種類
物件には下記のような種類がある。
1 物の価値の帰属・支配を目的とするもの=本権
「本権」とは、物を支配する権利のことを指す。したに述べる「占有権」とは異なり、支配していることに法的根拠があるものを指す。
「本権」で扱われる物の価値には以下の2つがある。
①交換価値 財貨を市場において処分(換価)することにより得られる価値
②利用価値 財貨を使用・収益することにより得られる価値
本権の分類:所有権と制限物権
「所有権」とは、 自分の物に対する物権のことをいう。1①交換価値②利用価値の全ての支配を目的とする。
「制限物権」とは、他人の物に対する物権のことをいう。「制限物権」は交換価値と利用価値のどちらかしか支配できない。 「制限物権」はさらに「用益物権」と「担保物権」に分けられる。
制限物権の分類:用益物件と担保物件
用益物権:他人の物を利用する物権である。1②利用価値のみの支配を目的とする。
ちなみに用益物権は全て土地に対する権利であり、土地以外の物に対する用益物権は存在しない。 例)地上権、永小作権、地役権、入会権
担保物権:債権の担保のための物権である。1①交換価値のみの支配を目的とする。
例)抵当権(根抵当権)、質権、留置権、先取特権、
2 事実状態の帰属・支配を目的とするもの=占有権
「物を現実的に支配している(=占有)」という事実だけに基づいた物権のことを「占有権」という。
占有自体を保護するために,民法180条以下では占有者(事実上の支配をしている人)の地位に権利性を認め,法的に保護している。
この場合、占有が正当なものかどうかは問わない。